その他の感染症
治療抵抗性の肺炎
「抗菌薬をもらったけど,熱と咳と息切れがよくならないです」
- 肺炎の15%ほどは通常の抗菌薬治療が効かない(または効果が遅い)と言われています。
- 抗菌薬が効きづらい耐性菌による肺炎,肺膿瘍や膿胸があるとき,肺結核,肺真菌症(アスペルギルス症など),免疫不全があるとき,悪性腫瘍(肺がん,がん性リンパ管症),膠原病,器質化肺炎,薬剤性肺障害など原因はさまざまです。
- 診断には,CTスキャンや気管支鏡が必要な場合も少なくありません。この際には,呼吸器内科専門医にご紹介いたします。
感染性心内膜炎
「先週歯を抜いてもらったけど,ずっと微熱があって,なんとなくだるいです」
- 抜歯処置や慢性歯肉炎、皮下の細菌感染、長期間の点滴、胃腸などから,グラム陽性球菌(黄色ブドウ球菌、腸球菌、α溶連菌)が血管内に侵入しておこる,心臓弁を含む心臓の内膜の感染症です。
- 長く続く微熱,だるさ,疲れやすさ、寝汗、体重減少といった全身症状があり,眼球結膜・眼底(Roth斑)・頬粘膜・口蓋の点状出血、爪下点状出血、手掌・足底の斑点(Janeway lesion),関節痛・筋肉痛・腰痛もよくみられます。
- 弁膜障害、心筋障害、心不全,心筋梗塞,脳血管障害、髄膜炎、腹痛(腹部内臓動脈の塞栓症状)、血尿(腎梗塞)、四肢の急性動脈閉塞を起こして気が付かれることがあります。
- 診断は血液培養と心臓超音波で行います。比較的長期間の抗菌薬の点滴治療が必要です。
- 治療が遅れると心臓弁膜症を起こして手術が必要になることもありますので,抜歯のあとの長く続く微熱があるときには,専門医にご紹介いたします。
(感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版). 一般社団法人日本循環器学会より引用・改変)
尿路感染症
「熱が出た」「おしっこする時に痛い」「背中の右側(左側)が痛い」
- 女性の膀胱炎などが多いのですが,男性でも脳卒中や前立腺肥大による排尿障害,尿道カテーテルの使用があると発症することがあります。
- 尿検査(尿中亜硝酸塩,白血球エステラーゼ,細菌培養)や画像検査(超音波,CTスキャン,膀胱鏡,尿路造影)を用いて診断し,抗菌薬治療と排尿障害の治療を行います。
結核
- 長く続く微熱や咳があるときには,肺結核を疑って,胸部CTスキャン,3日連続の喀痰検査,血液や胸水の検査を実施します。胃液を採取して診断できることもあります。
- 菌の量が多いときには入院治療が必要ですので専門医にご紹介いたします。
- 3-4種類の抗結核薬を6ヶ月間連続で内服することで治療します。
非結核性抗酸菌症
- 結核菌と同じく長く続く微熱や咳が出現します。結核と違って他人に感染することは少ないので外来で治療を行います。
- 軽症の場合は抗菌薬治療を行わないこともありますが,空洞がある例,気管支拡張症がある例,免疫不全がある例などでは,抗結核薬を含む抗菌薬3-4種類併用して治療をします。